公益財団法人 東予育英会 東予学舎 東京都調布市にある男子学生寮

東京都調布市にある男子学生寮の紹介です。

  「酔いたんぼの戯言」(7)    10月19日  佐伯信治(第 35回)

 まずはじめに私事ではございますが、10月1日付にて住友金属鉱山(株)東予工場・事務課勤務を命ぜられ過日着任いたしましたことをご報告申し上げます。ここ東予工場は、同社別子地区の中で最も西に位置し、海岸線を走って新居浜から西条に入ったところの海側にある工場です。要するに新居浜の西端であり西条の東端でありますため、何をしている工場かを簡単に触れさせていただきます。

 メインは何と言いましても「銅」であります。次にはその副産物として価値が高い「金」「銀」「白金」などの貴金属、さらに逆に価値の低い「硫酸」などであります。

 歴史は古く1691年に別子銅山が開坑してから、公害問題と戦い続けてやっとのことで辿り着いた無公害の工場であります。最近では、中国やインドなどを中心としたインフラ整備のために電線需要が大幅な伸びをみせている中、弊社としましても大幅な増産起業を実施しているところであり、今年度末までに電気銅で410千トン/年、来年度で450千トン体制を構築し、世界でも屈指の工場となることを目指している最中であります。

 結局、鹿児島には2年2ケ月の在任で、その前の東京都青梅市が丸1年でありましたことから、ここのところは引越しばかりしているという状況です(笑)。

 また、業界としましても以前の電子材料事業が「μ(ミクロン)」単位であったのに対して、金属では「トン」単位ということでまずは単位に慣れるということから始めなければなりません。工場内環境も、クリーンルームが多くある工場から、事務所以外では常にヘルメットとゴーグル(場所によっては防毒マスクも)というこの移り変わりの激しさにいささか体型もスマートになったのではないかと実感しています。

 実家は西条でありますが、独身ゆえ毎日顔を合わせる度に結婚結婚と言われる煩わしさから回避するため、会社の寮には荷物が多くて入りきらないため、はたまた立場上工場からの呼び出しがあるため、など複雑な事情により新居浜市内(西原町)にアパートを借りております。

 丁度10月の異動ということで、今年は20数年振り、恐らく高校を出て初めてになると思いますが、西条祭りを堪能しました。おかげで足・腰・肩がズタズタな状況です。

 一方で、会社は新居浜祭りに合わせて休日となっているため、17 、18日は41年目にして初めて生で新居浜祭りを見物しました。丁度今年は、2年に1度の「船御幸」もあり、勇壮なかき比べなどもありましたが、どうもいけません。心ときめくものがないのです。新居浜ご出身・在住の方にはまことに申し訳ないのですが、やはり生まれ育ったところの祭りが一番かと・・・

 ただ、西条のようにベロンベロンになった若い女性があちこちで寝っ転がっているというようなあさましい光景がないのは好感が持てますし、会社の女性からも「西条は酔っ払いばっかりで怖い」との発言があり、そういう部分では反省すべきところもあるのは事実です。

 祭りと言えば、小生の実家のだんじりは数年前に150年前の作と言われる中古屋台を購入し「弁財天(七福神は「べんざいてん」ですが、「べざいてん」と呼んでいます)」として運営しています。新築の屋台が増える中、伝統的な屋台をあと150年存続させようということで、今年思い切って「輪島塗り」を施しました。金額の話をするのは下世話ですが、定価ベースでは1千万円とも言われています(本体より高いのでは?)。丁度引越しも一段落した10月8日にお披露目があり参加しましたが、輪島からは市長さんやら商工会議所の会頭さんやらに駆けつけていただき、西条の伊藤市長も含めて秋晴れのもと盛大に開催されました。輪島市長さんは豪傑な方で、体も大きいのですが日本酒をビールジョッキで飲まれていたとのことでいやはやさすがの私もたじたじであります。おかげさまで、祭り期間中は、弁財天屋台を多くの方が近くに寄って目を凝らしてご覧になられておりました。

  今年は、西条も新居浜も大きな衝突はなく無事に終了したようですが、思わぬところで事故が発生しました。17日の夕刻、新居浜・西原入りして間もなく、昭和通りに面した10階建てのマンションの5階から小学校低学年と思われる男児が転落しました。小生のアパートのすぐ近くだったため、救急車のサイレンで駆けつけたところ、頭から大量の血を流したままの男児がピクリともせず倒れておりました。救急隊員が心臓マッサージをしているのを見て、残念だけど助からないかな、と。翌日の新聞でやはり亡くなったとの記事が掲載されておりました。可哀想なのは男児本人で、どうやら親がベランダの手すりに階段をつけて上がれるようにしており、そこで一人で観覧していたところバランスを崩して転落したとのことです。このような状況にして子供一人だけで留守番をさせていた親には大きな責任があります。大好きな太鼓台を目の前にしながら一瞬のうちに尊い命が奪われたという、なんともやりきれない気分です。

  今朝は、会社でもこの話があちこちで話題となっていました。若輩者でありながらまたえらそうなことを言うようですが、会社における安全活動においても「本質安全」を追求しなければなりません。単に注意を促すような看板をつけたから安全だ、教育をしたから安全だ、ということではなく、人間は何をするかわからない、だからこそ信じられない行動をとったとしても安全が確保できるようにしなければならないのです。回転物に手を入れるという事故がなくなりませんが、本質安全とは、手を入れようとしても物理的に入らない仕組みにするとか、入れようとした瞬間にセンサーが感知して惰性なく瞬時に停止するとかという改善を施すことであります。そういう意味では、前述の事故は、逆に不安全行為を助長するような親の対応であったわけで、こうした悲惨な事故はなくさなければなりません。

  最後はいささか暗い話題となってしまいましたが、今回の祭り(西条、新居浜通して)では思いがけない旧友や学舎の先輩後輩に出会うことができました。数十年経って体型が大きく変わっても、学舎で同じ釜の飯を食った者同士は何かわかる部分があるのでしょうか。また数年後には転勤が待っているはずですので、できる限り旧交を温めたいと思います。

  これをご覧の皆さんの中で、「たまには佐伯の顔でも見てみるかいのぅ」と思われる方がいらっしゃいましたら、是非ご連絡いただき、一献傾けさせていただければと存じます。連絡先は、事務局までお問い合わせ下さい。

以上

↓写真は輪島塗りの前の写真です。(引用:西条祭りのホームページ